静かに
   彼女のことを
   考えること








  掃除機を
  いっしょに買おうね
  と約束をしていること

  花火を見に行こうと
  浴衣を着て
  と話すこと

  玄関に
  靴があふれ
  下駄箱を片づけなくてはということ

  窓を開けて
  汗だらけのTシャツやタオルを放り込んで
  洗濯機を回しだすこと

  昼休みと
  夕方仕事を終えたあとと
  電話をすること

  自転車で街まで
  靴下を買いに
  走ること

  本がふえ
  どちらの本も好きに読めて
  平積みされること

  狭い文机に
  食器を並べ
  おぼんにまで皿を乗せて夕ご飯にすること

  タオルが部屋に
  干してあるので手を拭くこと
  それを嫌がられること

  好きな音楽を教え
  教わり
  聴くこと

  ま夜中まで
  起きて
  二人でいるのを確かめること

  天気を気にして
  昼まの予定を
  朝考えること

  目をとじると
  腕に肩があたっていること

  空き缶や新聞や
  出しっ放しの物がいろいろ
  片されていること

  ほら早く
  行ってらっしゃい
  いいの遅れても
  何度も言われてようやく
  出かける気になって出かけること

  空を
  写真に撮るとき
  きみのことを考える
  きみならどう撮るだろうかと

  同じ道を
  家へ急ぐ間
  気が気でなくなる
  きみがいる家だから

  今日一緒にいる
  昨日もそうだった
  明日もそう
  ずっと
  と言えば
  ずっと

  本当に

  信号待ちをしていて
  携帯を見てみるとメールが届いていて
  返事を書くこと
  これから帰るから
  あとでねと

  自転車で行く道を
  きみを想って走っていること

  道の向こうを流れる街の木
  すり抜けていく通勤の車
  歩道のわきを急がないで走っていきながら

  昼まの明るい中
  汗をうすくかき始めている
  静かに

  静かに
  きみを
  考えること