鏡










  いまのこの冷えが
  俺が欲したものと同んなしだといい
  いまのこの冷えを進んで
  あのいつかのま下に暗がりの底がみえない
  不安で不安で重力が無くなったような
  自分の頭が気圧を失って
  暴発してしまいそうになる
  冷え冷め果てかけた場処の入口だといい
  俺は行くよ そのために捨てたんだ
  俺は辛いよ それは淋しいからなんだ
  そう、この淋しさは、
  あの冷えと隣り合せなんだけど
  同んなし処のモンじゃあない
  これは単の寂しさで
  あのま下からのそっくり全てを
  呑み込みに上がって湧いてさらわれかけた
  あの冷えとは
  隣り合わせのモンだけど
  違う
  俺は行くよ こわいよ 行くよ
  俺は寂しい でも行くよ 寒い
  この寒さは単の始まり
  あの冷えのおそろしさによく似た
  あの冷えと同んなしじゃあないけど
  いまの俺にぁ弱くてたまんないおっとろしさ
  でも行くきゃない事
  行くきゃないもの
  俺もうとっくに帰り道なんてねえもの
  俺もうあの子とキスしたいもの
  俺もう二度と逃げ戻りったくないもの
  羽よ飛べ
  俺のこころは宙空へ引っぱってくれ
  俺の勇気は、うん、これからちょっと
  冷えを越えて深く深く行くんだってから
  愛してる
  愛なんて言葉
  まっ暗で明かりも点きゃしないけど
  愛してる
  この冷えを越えたら
  もっと大きなもんだって言えると思うし
  そうなるために行くんだってから
  俺行くよ
  冷えの果ての果ての果てで
  も一度俺、逃げんないで
  まだいまじゃ足りない
  何かあの冷えを思い出してたら
  寂しい寒さがまつわりついて
  寂しいままなのに
  熱い 少ぅし